Amazonや家電量販店でLANケーブルを探していると、
- CAT6
- CAT6A
- CAT7
- CAT8
といった表記をよく見かけます。
しかもCAT8の商品を見ると、
「40Gbps対応!」
「超高速!」
「2000MHz!」
なんて書かれている。
そうなると、
「数字が一番大きいCAT8を買っておけば間違いないのでは?」
と思いますよね。
でも、ちょっと待ってください。
自宅で1Gbps~10Gbps程度のLANを構築するのであれば、基本的にはCAT6Aで十分です。
CAT7やCAT8が悪い規格という意味ではありません。
重要なのは、
LANケーブルは、カテゴリーの数字が大きければ自宅のインターネットが速くなるわけではない
ということです。
この記事では、CAT6A・CAT7・CAT8の違いと、なぜ家庭用LANではCAT6Aが有力なのかを解説します。
結論:自宅で10GbEを使うならCAT6Aで十分
最初に結論です。
これから自宅で10GbE環境を構築するのであれば、CAT6Aを選んでおけば基本的には十分です。
ざっくり比較すると次のようになります。
| カテゴリー | 周波数帯域 | 主な用途 |
|---|---|---|
| CAT5e | 100MHz | 1GbE |
| CAT6 | 250MHz | 1GbE、条件次第で10GbE |
| CAT6A | 500MHz | 10GbE |
| CAT8 | 2000MHz | 25GbE・40GbE |
CAT6Aは10GBASE-Tを最大100mのチャネルで利用することを想定した規格です。
一般家庭で、
「PCからスイッチまで100m」
なんて配線をすることはまずありません。
そのため、自宅で10GbEを利用するのであればCAT6Aには十分な余裕があります。
一方、CAT8は25GbEや40GbEといった、さらに高速な通信を想定した規格です。
つまり、
CAT8はCAT6Aより数字が大きいから家庭でも速くなる
という話ではありません。
そもそも想定されている用途が違います。
CATの数字は通信速度そのものではない
ここはかなり重要です。
CAT6Aは500MHz。
CAT8は2000MHz。
数字だけを見ると、
「CAT8はCAT6Aの4倍だから、通信速度も4倍になるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そうではありません。
500MHzや2000MHzという数字は、LANケーブルが扱う信号の周波数帯域に関係する値です。
一方、
- 1Gbps
- 2.5Gbps
- 5Gbps
- 10Gbps
- 25Gbps
- 40Gbps
という数字はEthernetの通信速度です。
これは別の話です。
CAT8に交換しても1GbEのPCは1Gbpsのまま
具体例で考えてみましょう。
自宅の環境が、
- PC:1GbE
- スイッチ:1GbE
- ルーター:1GbE
- インターネット回線:1Gbps
だったとします。
ここでLANケーブルだけを、
CAT5e → CAT8
に交換したらどうなるでしょうか。
答えは、
最大1Gbpsのままです。
PCやスイッチが1GbEにしか対応していないからです。
ネットワークの通信速度は、LANケーブルだけで決まるものではありません。
たとえば、
PC
↓
LANケーブル
↓
スイッチ
↓
ルーター
↓
インターネット
という経路があれば、その途中に1Gbpsの機器が存在すれば、そこがボトルネックになります。
高性能なLANケーブル=通信速度アップではない
道路に例えると分かりやすいです。
途中の道路だけ8車線にしても、その前後が1車線なら交通量がいきなり8倍にはなりません。
LANケーブルも同じです。
CAT6Aなら10GbEを100mまで想定できる
家庭用10GbEでCAT6Aをおすすめする大きな理由がこれです。
CAT6Aは10GBASE-Tを100mまで利用することを前提に設計されています。
つまり、
10GbE対応PC
↓
CAT6A
↓
10GbEスイッチ
↓
CAT6A
↓
10GbE NAS
という構成なら、自宅LANとして非常に扱いやすい。
10Gbps対応の光回線を導入する場合でも、
10GbE対応ルーター
↓
CAT6A
↓
10GbE対応PC
といった構成が可能です。
なので、
「10ギガ回線を契約したからCAT8を買わないといけない」
ということはありません。
CAT6ではダメなの?
ここで、
「CAT6でも10GbEが使えるって聞いたけど?」
と思う人もいるでしょう。
その認識は間違いではありません。
CAT6でも、ケーブル長や配線環境などの条件によっては10GBASE-Tを利用できます。
そのため、すでに自宅にCAT6が配線されているのであれば、
まず10GbEでリンクするか試してみる
というのもアリです。
正常に10Gbpsでリンクして、通信も安定しているなら、必ずしも交換する必要はありません。
ただし、新しく10GbE用のLANケーブルを購入するのであれば、最初からCAT6Aを選ぶ方が分かりやすいでしょう。
ではCAT8は何のために存在するの?
ここまで読むと、
「じゃあCAT8っていらなくない?」
と思うかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
CAT8にはきちんと用途があります。
CAT8は、25GBASE-Tや40GBASE-Tといった高速Ethernetを利用するための規格です。
代表的なのは、データセンターなどでの利用。
たとえば、
サーバー
↓
スイッチ
のような比較的短距離の接続で、高速通信を行う用途です。
CAT8を25GbE・40GbEで利用する場合は、最大30m程度のチャネルを想定します。
つまりCAT8は、
家庭用10GbEをさらに速くするためのケーブル
というより、
25GbE・40GbEという別の通信環境を実現するための規格
と考えた方が分かりやすいです。
CAT7は少し話がややこしい
そして、個人的に初心者が一番注意したいと思うのがCAT7です。
Amazonなどを見ると、
「CAT7 RJ45 LANケーブル」
という商品が大量にあります。
ここだけを見ると、
CAT6
↓
CAT6A
↓
CAT7
↓
CAT8
という単純な進化だと思ってしまいます。
ところが、実際のケーブリング規格はもう少し複雑です。
CAT7はISO/IEC系のCategory 7やClass Fなどと関係する規格で、コネクターについても一般的なRJ45だけを前提とした単純な話ではありません。
そのため、
「RJ45でCAT7と書いてあるから、CAT6Aより確実に高性能」
と考えるのは少し危険です。
通販サイトの商品表記と、ケーブリング規格としてのCategory 7を分けて考える必要があります。
このCAT7問題については、別の記事で詳しく掘り下げたいと思います。
CAT7やCAT8を買ってはいけないわけではない
ここも誤解してほしくないところです。
CAT7やCAT8を使ったからといって、ネットワークが壊れるという話ではありません。
しっかりしたメーカーの製品で、
- 値段も問題ない
- 取り回しも問題ない
- 自分の用途を理解している
のであれば、CAT8を使うこと自体を否定する必要はありません。
ただし、
「数字が大きいから安心」
という理由だけで選ぶ必要もありません。
LANケーブルではカテゴリー表記だけではなく、
- 使用するEthernet規格
- ケーブル長
- メーカー
- 配線場所
- ケーブルの太さ
- 取り回しやすさ
- シールドの有無
なども重要です。
STPならUTPより高性能?
CAT6AやCAT7、CAT8を調べていると、
- UTP
- STP
- FTP
といった言葉も出てきます。
すると、
「シールド付きのSTPの方が高性能だから、家庭でもSTP一択では?」
と思うかもしれません。
しかし、これも単純ではありません。
シールドケーブルは、コネクターやパッチパネル、接地なども含めて配線システムとして考える必要があります。
家庭で適当にシールド付きケーブルだけ導入すれば必ず有利になる、というものではありません。
これも、
「スペック表の数字が高そうなものを選べば正解」ではない
という良い例です。
家庭では結局どのLANケーブルを選べばいい?
では結局、自宅では何を選べばいいのでしょうか。
個人的には次のように考えます。
1GbEまでしか使わない
CAT5eまたはCAT6で十分です。
すでにCAT5eで配線されていて1Gbpsで正常にリンクしているなら、わざわざ交換する必要はありません。
新しくLANケーブルを買う
CAT6またはCAT6A。
CAT6Aとの価格差が小さいなら、将来10GbEを使うことを考えてCAT6Aを選んでもいいでしょう。
10GbEを使う
CAT6Aがおすすめです。
新しく10GBASE-T環境を構築するのであれば、一番分かりやすい選択肢です。
25GbE・40GbEをメタル配線で使う
ここでCAT8が候補になります。
ただし、一般家庭ではかなり特殊な環境でしょう。
壁の中に配線するならCAT6Aを検討したい
特にCAT6Aをおすすめしたいのが、
壁内配線
です。
机の上にある2mのLANケーブルなら、あとから簡単に交換できます。
一方、
- 壁の中
- 天井裏
- 床下
- 配管内
にあるLANケーブルを交換するのは大変です。
そのため、新築やリフォームなどでLAN配線を行う場合は、
簡単に交換できない場所ほど将来を見越す
という考え方が重要です。
10GbEまで視野に入れるのであれば、CAT6Aはかなり有力な選択肢になります。
「CAT8なら未来永劫安心」というわけでもない
最後にもうひとつ。
「どうせ将来もっと高速になるなら、最初からCAT8にすれば一生使えるのでは?」
と思うかもしれません。
しかしネットワークは、LANケーブルだけで進化するわけではありません。
高速化すると、
- Ethernet規格
- NIC
- スイッチ
- トランシーバー
- 光ファイバー
- 消費電力
- 配線方式
なども変わっていきます。
将来の高速ネットワークが、必ずしもRJ45のメタルケーブルを使い続けるとは限りません。
だから、
今必要な性能+少しの余裕
くらいで設備を選ぶのが現実的です。
まとめ:LANケーブルは数字ではなく用途で選ぼう
LANケーブルを選んでいると、
CAT6よりCAT7。
CAT7よりCAT8。
と、数字が大きいものを選びたくなります。
しかし家庭用LANでは、それが必ずしも正解ではありません。
自宅で10GbEまで利用するのであれば、
CAT6Aで十分です。
重要なのは、
「一番強そうなケーブルを買うこと」ではなく、「自分のネットワークに必要な規格を選ぶこと」
です。
これから自宅10GbE環境を作るのであれば、
迷ったらCAT6A
くらいに覚えておけば、かなり失敗しにくいでしょう。
次回は、
「CAT6とCAT6Aは結局何が違うのか?10GbEならどちらを選ぶべきか」
をもう少し詳しく解説します。
参考資料
本記事では、LANケーブルのカテゴリーや10GBASE-T、Category 8などについて、以下の技術資料を参考にしています。
- Fluke Networks「ツイスト・ペア配線テスターと10ギガ・ケーブル配線」
10GBASE-T(IEEE 802.3an)や、Category 6A / Class EAによる100mの10GbE配線、既設Category 6での利用条件について解説されています。 - Fluke Networks「カテゴリー8ケーブル・テスト」
Category 8が2GHzまで規定され、25GBASE-T / 40GBASE-T向けに最大30mのチャネルを想定していることや、主にデータセンター用途を想定した規格であることが解説されています。 - Siemon「TERA Category 7A シールド付きケーブリングシステム」
ISO/IEC Category 7A / Class FAや、TERAインターフェースを利用したシールド配線システムについて確認できます。 - IEEE P802.3an Task Force
10GBASE-Tを規定したIEEE 802.3anに関するIEEE公式資料です。
※規格や製品仕様は改訂される場合があります。実際に配線・機器を選定する際は、各メーカーの最新仕様も確認してください。
